―1900年~1902年、ヨーロッパと日本の年賀はがき
高い印刷技術を反映し、色彩にあふれた西欧のグリーティングカード
絵はがきの発祥は1870年、ドイツ連邦とフランスとの間に起こった普仏戦争といわれています。プロイセンやフランスで兵士のための絵入り慰問はがきが作られ、兵士たちはそれを買い求めて故郷に送りました。一般には、同年ドイツにおいて官製はがきに兵士と大砲を印刷したものが、世界で最も古い絵はがきとされています。
19世紀の終わり頃にはヨーロッパで絵はがきがブームになり、各都市に絵はがきを扱う店も登場。絵はがきが市民に浸透していた1900年には、年明けを祝う彩り豊かなグリーティングカードが送り交わされていました。絵に描かれる題材も、幸運のモチーフである豚や四葉のクローバー、砂時計を手にドレスアップした美女やピアノを弾き語りする女性、カレンダーを持った犬と猿、雪の降り積もった街並み、美しい草花など、バラエティーに富んでいます。
1900年 ヨーロッパのアンティーク年賀
1901年 ヨーロッパのアンティーク年賀
1902年 ヨーロッパのアンティーク年賀
この頃日本では、私製はがきの認可により年賀状が進化!
一方、日本で私製はがきが認可され、官製はがきと同じ料金の切手を貼って差し出せるようになったのは1900(明治33)年10月のこと。1900年までのお正月には、官製はがきに毛筆で挨拶文を手書きしたもの、シンプルな風景画などを印刷したものが送られていました。ほとんどがモノクロで、カラー印刷は稀少だったようです。当時の年賀状の大半は先進的な企業や店舗など法人のご挨拶だったこともあり、紋付袴姿でお辞儀する人の絵を添えたデザインもこの時期にはよく見られます。
そして私製はがき認可直後、1901(明治34)年の年賀状には、多色刷りのものが増加。羽子板や七福神、鶴や蝶のイラストに加え、干支の牛を描いたはがきも差し出されています。1902(明治35)年にはさらにカラフルになり、モチーフも多彩に。店頭でいま販売されていても違和感のない上品なデザインに、流れるような筆運びの手書き文字が映えていますね。当時の人が美文字で記した「貴家の萬福を祈る」といったフレーズも、はがきに格調高さをもたらしています。
1900年 日本のレトロ年賀状
1901年 日本のレトロ年賀状
1902年 日本のレトロ年賀状