大正2(1913)年、昭和12(1937)年の丑年年賀状から、2021年の年頭のご挨拶にも喜ばれそうなデザインをピックアップしました。
かしこまった牛やダンスを踊る牛、ヨーロッパの絵葉書とも比較しながら、ご紹介しましょう。
1.ご挨拶の形、さまざま
干支が羽織袴でかしこまって新年のご挨拶をする姿は、年賀状のデザインとして、明治の終わりころからよく見かけるようになります。これらの絵を見ますと必ず扇を持っています。
なぜ扇を持っているのか、疑問に思って調べてみましたが、年始の挨拶だから特別にというのではなく、「和装の正装には吉凶を問わず扇を用いる」ということのようです。
このような新年のご挨拶の絵柄は、古くは江戸時代の年始状にも登場しますが、明治15年の浅草の江崎写真館の年賀状にも見られます。この江崎写真館では20年以上もこのパターンを続けています。初めは一人だけですが、明治30年代に入ると、息子と二人でご挨拶をする様子が描かれています。
2.年賀状を運ぶ牛
大きなカバンからあふれんばかりの年賀状を携えて配達に出かけた牛。
年賀状を1月1日に配達するという今では当たり前の習慣はいつ頃から始まったのでしょうか。
明治30年代のはじめまでは、1月1日は郵便局はお休みでした。ですからその頃は、年賀状は主に1月2日に配達されたのです。まとめて配達をするという制度がなかったので、年内に届いた葉書もあったはずです。
年賀郵便物特別取扱制度(引き受け期間を決めて、まとめて1月1日に配達をするという制度)は、明治33年に東京から始まり30年代の終わりに全国に普及しています。
この制度が整ったことも、それ以降の年賀文化の発展に大いに貢献しています。大正2年の年賀状はもちろん1月1日に配達されました。
3.タバコの煙の行方
タバコの煙が西暦年号に変わっていくという年賀状のデザインは、日本だけでなくヨーロッパの年賀状にも登場します。
日本ではその年の干支がパイプや葉巻をくわえていますが、ヨーロッパのものを見ますと、子だくさんゆえにラッキーアイテムとされる豚(豚の年賀状はよく見かけます)が水タバコ?を吹かせていたり、ピエロの絵葉書年賀状もあります。
ピエロの年賀状をよく見ますと、手に持ったタバコの先から立ち昇る煙が1となり、ピエロの口から吹き出される煙の輪が9や0や6になるなど、ちょっと手が込んでいます。年賀状の絵柄で東西を比較してみるのも楽しいものです。
4.郷土玩具をモチーフとして
これは昭和12年の木版刷り年賀状ですが、昭和の10年前後には木版で印刷された年賀絵葉書がたくさん市販されるようになりました。木版ものでは、郷土玩具をモチーフにした絵柄も人気商品だったようです。
この葉書は大村令邦(日本画家)が描いたものを東京の絵葉書屋が出版したもので、タイトルが「丁丑郷土玩具集」となっています。この絵は伏見の俵牛ですが、善行寺の布引牛や会津の赤牛など各地の郷土玩具が登場しています。
5.ヨーロッパの流行を取り入れる
大正2年の日本の絵葉書
ヨーロッパで作られたcake walkの絵葉書
片足を上げて軽快に踊る牛。これに似た絵柄は昨年のレトロ(復刻版)年賀状にも登場しています。このネズミやウシの踊りは、当時ヨーロッパで流行っていたcake walkというダンスを真似たものです。
もともとcake walkは、19世紀末にアメリカの黒人たちの間で始まったダンスで、20世紀に入ってヨーロッパへも広がりました。
ヨーロッパで作られたcake walkの絵葉書をご覧ください。背筋を伸ばして、かっこよく踊ってますよね。
このダンスが日本で流行ったのかどうか知りませんが、大正2年の日本の牛たちのダンスは、どこかぎこちなく見えてしまいます。
これらにアレンジを加えて復刻した2021年用の年賀状は、下のリンク先から購入可能。
お気に入りが見つかったら、ぜひチェックしてみてください!