毎年何枚かは届く「喪中はがき」。受け取る側にもマナーがあるのをご存知ですか?
「年賀状はいりません、っていう意味だからコチラは何もしなくていいんじゃないの?」とそのまま放置していませんか?
本当にそれでよいのでしょうか?大切な友人や目上の方に対して失礼のないよう、大人のマナーを身につけてワンランク上のお付き合いができるようになると素敵ですね!
目次
「喪中」と「喪中欠礼状」のキホンをおさえよう!
【まずは知っておこう】そもそも「喪中」ってナンだ?
身内や近親者が亡くなった場合、宗教や慣習等で多少の違いはありますが、一定期間さまざまな行動や行事などを慎んで静かに過ごします。この期間を「忌中」や「喪中」と呼びます。
「忌中」と「喪中」の違いは、現代においてはあまり厳密なことは求められませんが、「忌中」は仏教でいえば49日法要(忌明け)までとされており、この期間はなるべく外出を控え、自宅で静かに過ごして派手な行動を慎むべきとされています。
これに対して「喪中」は、約1年間とされており、外出などは特に制限する必要はありませんが、お祝い事や華やかな行事の開催および参加などを控えて、亡くなった人を偲びながら過ごします。当然、お正月の松飾や鏡餅なども飾りませんし、初詣もしません。
この「忌中」や「喪中」については、亡くなった人との続柄に応じた期間などがあり、日本では明治時代まで「忌中・喪中」に関する事項が法令として細かく定められていました。
しかし現代では廃止されているので、これについて特段厳密なことを求められる機会はあまりないでしょう。しいていえば、現代でもその名残として「忌引き休暇」がありますが、その期間についてはそれぞれの企業や学校の規定があるのみです。
- 身内に不幸があったときは、1年間は喪中となり、翌年の年賀状のやり取りを避けるために喪中はがきを出す
- 喪中は、結婚式や地鎮祭、祝賀会などの慶事や華やかな行事を開催・主催することを控える(ただし、あらかじめ予定されていたことなどの例外はあり)
大人の常識としては、概ね上記2点程度のことをおさえておけば、まず困ることはなさそうです。
喪中欠礼状をもらって放置してもOK?
「喪中欠礼状」(喪中はがき)とはその名の通り、「当方が喪中のため年始年頭のご挨拶(年賀状)を控えさせていただきます」という役割の挨拶状です。
年賀状のやり取りを遠慮するという性質上、相手が年賀状を準備する前までに知らせる必要があるので、11月下旬から12月上旬くらいには届くように出すのが一般的です。
と、ここまでは喪中はがきを出す側のマナーです。
では喪中はがきを受け取るアナタはどうするべきなのでしょう?
喪中はがきを受け取る側は「喪中はがきを受け取ったら、その年の年賀状は出さないようにする」というのはもちろんですが、そのほかも気になるところですね。世間的な通例として、喪中はがきを出した相手に対しては年賀状を出さない、というだけで終わらせているケースが圧倒的ではありますが、それだけでは寂しいと感じる人も少なくないようです。
相手、あるいは故人との関係性にもよりますが、喪中はがきを受け取ったら「寒中見舞い」や「余寒見舞い」「お悔み状」などを送ると丁寧な印象になるでしょう。
知っておきたい「寒中見舞い」「余寒見舞い」「お悔み状」のAtoZ
「寒中見舞い」「余寒見舞い」とは……
「寒中見舞い」や「余寒見舞い」は、相手が喪中の場合のみに送るものというわけではありません。
呼び方からも分かるように、これらは「季節の挨拶状」であり、「暑中見舞い」や「残暑見舞い」と同じようなジャンルとなります。
しかし、時期的に年頭の挨拶と重なることや喪中はがきなどとも関係してくるので、通常の季節挨拶とは少し違った役割があることもたしかです。
「寒中見舞い」と「余寒見舞い」の違いは、これを書く時期によります。
- 「寒中見舞い」……松の内が明けた1月8日~立春の前日となる2月3日までに出す。
- 「余寒見舞い」……2月4日(立春)以降、まだ寒い時期に出す。
通常は葉書を用いることが多いです。当然のことですが、喪中の相手に出すことも多いので年賀はがきを流用するのは絶対にNGです。日本郵便の通常はがき、もしくは一般的な私製はがきを用いましょう。
どうしても書きたい内容が多くなる場合や、特別な理由がある場合は封書でも問題ありませんが、あまり例を見ませんので、相手は少し重く感じることがあるかもしれません。
出す相手との関係性を考えて選ぶことが大切です。
「寒中見舞い」「余寒見舞い」にはどんなことを書けばよい?
「寒中見舞い」および「余寒見舞い」は、あくまで季節の挨拶状ですので、特に決まった形式があるわけではありません。
自分の書きたいように書いても全く問題ないのですが、やはりある程度のポイントをおさえておくと、はがきを受け取った相手により素敵な印象を与えられるでしょう。
- 季節の挨拶(「寒中お見舞い申し上げます」「余寒お見舞い申し上げます」など)
- 相手の安否をたずねる文および、喪中についてのお悔み、年賀状を出してしまった謝罪等
- 自分の近況
- 結びの文
それぞれの状況によっても異なりますが、概ね上記のポイントをおさえられていれば、大きく礼を欠くことはないでしょう。書く相手が自分にとってどのような立場の人物であるのか、という点で言葉遣いや表現などを変えることも大切です。
特に喪中の相手に出す場合には、年賀状に用いられるような賀詞やおめでたい表現などを避ける必要がありますので、注意しましょう。
また喪中はがきを受け取ってからお悔みなどを述べるために送る場合は、できる限り早い時期がよいので余寒見舞いではなく、松の内が明けたらすぐに寒中見舞いとして出したほうがよいでしょう。
「寒中見舞い」文例
相手が喪中であることを知らずに年賀状を出してしまっていた場合などは、必ず「喪中であることを知らずにいたことを謝罪する内容」と「お悔みの言葉」を記載するようにしましょう。
(例)
寒中お見舞い申し上げます
このたびはご母堂様のご逝去にともないご服喪中とは存じ上げずに 年頭のご挨拶を申し上げてしまいましたこと 誠に申し訳ございませんでした
お悔みが遅れましたことを深くお詫び申し上げますとともに ご母堂様のご冥福を慎んでお祈り申し上げます
寒さ厳しい折から ご家族皆さまくれぐれもお体を大切にお過ごしくださいませ
令和○年一月
「お悔み状」とは?お香典は送るべき?
「お悔み状」は、時期などには関係なく、相手の服喪などを知った時点でお悔みの気持ちを表すために出す挨拶状です。
12月頃に届いた喪中はがきに対して松の内が明けるまでそのままにするよりも、早くお返事などをできるので、相手に不幸があったことを知らずに弔問などもしていない場合は、まずはお悔み状を送ると、とても丁寧な印象になります。
相手との関係や亡くなった方がどなたかにもよりますが、このタイミングでお悔み状とともに香典などを送ることもOKです。
香典では少し重すぎるかな?という場合はお線香などを添えるのもスマートです。ただし、相手が仏教以外の宗教(神道、キリスト教など)の場合は、お線香は逆に失礼になりますので、気をつけましょう。
しかし、「喪中欠礼状」(喪中はがき)という呼び方からも分かるとおり「喪中のため、年頭のご挨拶等のやり取りを失礼させていただきます」という意味合いのものとなりますので、こちらからイロイロと送ってしまうと、かえって相手に気を遣わせてしまうことにもなりかねません。
あくまでも相手の立場に立って考えることが大切です。
「お悔み状」文例
「お悔み状」は「寒中見舞い」のような季節の挨拶状とは違い、目的のはっきりした挨拶状です。
喪中はがきを受け取ってはじめて相手の不幸を知った場合に出すお悔み状には、「お悔みの言葉・表現」と「喪中を知らなかった、弔問に伺えなかったことへの謝罪」、「相手や遺族を気遣う言葉・表現」を記載することがポイントとなります。
(例)
ご母堂様のご訃報に接しまして、あまりに突然のことで驚きとともにご家族の皆さまの悲しみをおもい、胸を痛めております。
本来であれば、すぐにでも駆けつけてお悔みを申し上げなければならないところではございますが、やむを得ない事情によりお伺いできませんことを深くお詫び申し上げます。
略儀ながらご家族の皆さまに心よりお悔やみ申し上げますとともに、ご母堂様のご冥福を慎んでお祈り申し上げます。
(香典や線香などを添えて送る場合)
心ばかりのものをお送りさせていただきましたので、ご母堂様のご霊前にお供えいただければと存じます。
悲しみにお力を落とされているかと存じますが、どうぞご自愛くださいませ。
また、「お悔み状」を書く場合は、下記のポイントにも注意しましょう。
- 忌み言葉や重ね言葉を使わない。(例)「死ぬ」「滅ぶ」「重ね重ね」「次々」など
- シンプルな白い便箋、あるいは絵柄などの入っていない葉書を使う(控えめな花柄などはOK)。便箋を使う場合は、1枚におさまるようにする。
- 封筒を用いる場合は、二重封筒ではなく一重のものを使う。
こんなケースはどうしたらよい?
直接弔問に伺った、あるいは相手に不幸があったことを知っているのに、相手からは特に喪中はがきなどが届かなかった場合は、こちらから何か送ってよいのか迷うこともありそうです。
もちろん、喪中はがきが届いていないからといって年賀状を送ることなどは絶対にNGですが、それ以外の「寒中見舞い」や「余寒見舞い」などであれば送ってもOKでしょう。
ただし「お悔み状」については、すでにお悔みを述べているということもあり、少ししつこく感じる人もあるかもしれませんので、このスタイルをとらないほうがよいともいえそうです。
まとめ
相手の喪中は、繊細な問題でもあるので、どうやって対応したらよいかということを悩んでしまう人も多いと思います。
大切なことは、形式ばかりにとらわれるのではなく、相手の立場に立って考えることです。自分の気持ちを伝えることのみを先行させるのではなく、あくまで相手や遺族の心情を気づかった対応がスマートな「大人のマナー」といえるのではないでしょうか。
このことを念頭にお手紙などを書いてみると、受け取った人が気持ちよく読める素敵なご挨拶状となるでしょう。
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