2019年は「亥年」! 今回は亥年について干支の由来から亥年生まれの方の相性までまとめてみました。他のメジャーな動物に比べて、マニアックな雑学がたくさん! きっと、誰かに話したくなるはずです。
目次
知ってると誰かに話したくなる! 亥年雑学。
十二支は、もともと1年を12分割するという天文学からきたものです。古代中国から伝わったこの文化は、日本でも時間や月日を測るものとして、農業などで親しまれてきました。
はじめは季節ごとの植物の状態を表す漢字が用いられていたこの干支ですが、その後一般の人たちにも親しんでもらおうと、ひとつひとつの漢字に動物が当てはめられるようになりました。
イノシシが「身近な動物」だなんて今ではちょっと違和感がありますが、昔の日本の人々にとっては身近な存在だったのですね。かつて日本では、イノシシはどんな存在だったのでしょうか? さっそく見ていきましょう。
人々とイノシシの意外な関係
犬と同じくらい嗅覚が優れていて、神経質な生き物であるイノシシ。ちょっとした変化にもすぐに気がつき、いつもと違うものを見かけると、できるだけ避けようとする習性もあります。
アニメ映画『もののけ姫』にも、齢500歳のイノシシの王「乙事主」が登場していましたね。物語の中でも彼は
・高齢もあって目が見えないが、嗅覚がそれを充分に補って余りある。
・イノシシの毛皮を纏い、匂いを消していた人間たちの細工に気付くなど、察知能力が高い。
など、頭がよくて鼻の利く、イノシシという生き物ならではの活躍をしていました。昔の日本人の持っていた、イノシシという生き物への尊敬と恐れが投影されているようです。
■食用としてのイノシシ
縄文時代から狩猟対象で、日本の人々にとって貴重なタンパク源だったイノシシ。イノシシを食べることは「薬喰い」といわれ、厳しい冬には滋養や保温のために薬として特に重宝されていました。
日本のイノシシ食、海外のイノシシ食
狩猟の時代が終わり、奈良時代から明治時代にかけて、日本は長い長い肉食禁止の時代に入ります。仏教を厚く信仰していた日本は、身分の上下に関わらず、動物を殺してしまうことを慎んだのです。
ところがその間にも、イノシシ肉は日本においては制限を免れて、影響がないままでした。江戸時代、イノシシ肉は「山くじら」という隠語で、人々に楽しまれていた記録が残っています。イノシシをなんと「海の生き物」と解釈し、「うちで出しているのは肉ではなく、山のクジラだから」という方便で提供されていたのです。
そんな無理矢理な方便を使ってまで「食べたい!」、そう思うほど、人々はイノシシ肉を愛していたのですね。日本とは対照的に、海外では現在でもイスラームやユダヤ教で、豚と同様にイノシシの肉も忌避されます。イノシシも豚と同じく「食べると不浄になる」と考えられているそうです。
■遺跡の中のイノシシ
イノシシは多産であり、縄文時代から、豊穣の象徴としても重視されていました。山梨県北杜市大泉町の金生遺跡には、焼けたイノシシの下顎骨がまとまって出土しており、既にこのころから人間に食用として親しまれていたと考えられています。
また、この遺跡の焼骨には土器模様としてイノシシの装飾が見られ、イノシシが縁起物として、何らかの祭祀に関わっていた遺物であると考えられています。
■文学
イノシシは古来より、日本の人々に山の神として尊敬されてきました。日本最古の歴史書である『古事記』にも、神の化身として白いイノシシが登場するエピソードが残っています。
■海外での信仰
短い足とずん胴な体に見合わない優れた運動能力を持ち(その突撃は、大人でも跳ね飛ばされて大けがを負うほど!)、山を駆け回るイノシシは、その昔戦場の護神として武士や忍者が信仰していたそう。
また、古代インドでは、イノシシは神の化身のひとつで、さまざまな姿に変身できる神がイノシシに姿を変え、海に沈んでいた大地を救いあげたという話もあります。“神の使い”ではなく、他でもない、神が変身した姿。インドでのイノシシの扱いは、日本の『古事記』と通じるところがありますね。
さわってみたい! イタリア・フィレンツェのイノシシの像
イタリアのフィレンツェには、「鼻を撫でると幸運が訪れる」というイノシシの像で有名な市場(メルカート・ヌオーヴォ)があります。
ブロンズでできたイノシシの鼻は、そこだけみんなにさわられて、ツルツルに光り輝いているんだとか。
現地では『幸運の子豚』と呼ばれ、フィレンツェのシンボルとなっているそうなんですよ。
フィレンツェに行ったらぜひ、訪れてみたいですね。
イノシシ周りのことわざあれこれ
ことわざや慣用句に織り込まれた動物の名前には、人々がその動物と関わってきた歴史や文化が反映されています。ここにも、かつての日本の人々にとってイノシシがどんな存在だったのかが垣間見えます。
●しし食った報い(ししくったむくい)
禁を犯して一時的によい思いをした埋め合わせに、それ相応の悪い報いを受けるという意味。また、悪事を働いたために受ける報いのこと。
●猪突猛進(ちょとつもうしん)
ひとつのものごとに対して、夢中で、かつ猛烈な勢いで突き進むこと。いのししが突進する様子にたとえていう。
●猪武者(いのししむしゃ)
状況を考えないで、向こうみずに敵中に突進する武士。
●荻と猪(はぎといのしし)
花札の七月の札に描かれる。日本文化において好相性とされた、優美な萩の花と荒々しい猪の取り合わせ。
亥年生まれの人の性格って?
「勇気と冒険」。イノシシが象徴するのは、そんな言葉だと言われています。
崩れない信念と頑固な意志を持ち、何事に対しても全力で臨む、亥年生まれの人々。不正を許すことのできない真面目な性格のため、
他人との苦労も絶えません。物怖じせずに間違ったものに向かっていく姿勢は尊敬されますが、欠点は、人と衝突したあとのフォローがちょっと苦手なこと。
だけど年齢を重ね、他人との付き合いかたを覚えていけば、いずれは要領よくこなせるようになっていきます。
なぜなら、亥年の人の持つ何よりの才能は忍耐強さ。その才能で自らの欠点を乗り越えれば、きっと成功もつかみ取ることでしょう。
亥年の人と戌年の人は似ている?
独特のものの見方を持っていて、なかなか周囲の人々の理解を得られないという宿命にあるのが、この2人。
芸術的な才能があり、絵や音楽など、一から何かを作る仕事が得意だと言われています。干渉されるのを嫌い、自立した人生を歩むところも似ています。
クリエイティブな方面で才能を発揮し、成功を収める人たちといわれています。
亥年の人と最も相性がいい相手
卯年だと言われています。初対面から強く惹かれ合い、お互いに好感が持てる大吉の相性なんだとか!
長期的にも、強い信頼感を結べるよいパートナーとなる関係です。
恋愛以外でも、力になったりしてくれるいい関係になりやすいと言われています。
そう言われると、周りに卯年の人はいないかどうか、つい気になっちゃいますよね。
海外の干支
イノシシが干支にいるのは日本だけ?
古代中国からアジアに伝わった干支ですが、なんと今回特集した「イノシシ」がいるのは日本のみ。
実は、現代ではイノシシを表す干支の「亥」は、もともとはブタを指して使われていたそうです。かつて日本ではブタが多く飼育され、一般の人々にとってポピュラーな生き物でしたが、その文化が廃れると、イノシシを「亥」と呼ぶようになったのだとか。
いまでも日本以外の国では、変わらず「亥」はブタを指す干支だそうですよ。
海外の干支にはあの「猫年」も!
他にも、チベット、タイ、ベラルーシでは「兎」が「猫」に、ベトナムでは「牛」が「水牛」に、「羊」が「山羊」に、などの違いがあります。「一般の人たちに親しんでもらおう」と、動物の名前があてはめられるようになった干支。日本以外でも、それぞれの国での身近な動物に当てはめられて、名前が置き換わっているのですね。
食べ物としてのイノシシ、神としてのイノシシ
日本文化のはじまりのころから「薬」として食べられ続け、同時に神として尊敬され続けてきたイノシシ。「肉」としておいしく、しかし怖いほど高い身体能力を持つ、イノシシという生き物ならではの人と歩んできた歴史なのでしょう。
この歴史は、動物の肉に対して感謝し、また畏怖していた、かつての日本人の生活を思わせます。干支の中でも、これほど神秘的な動物は他にないかもしれません。イノシシの雑学を知ったあとでは、イノシシを見る私たちの目もちょっぴり変わってきそうです。