年賀状デザインの裏バナシ | 切り紙作家 上野文緒 ~つくり手の想いを知る~
中国切り絵を現代風にアレンジ!
吉祥を願う図案には絵解きの楽しみも
切り紙作家
上野文緒
2010年より中国切り紙の手法を使った作品作りを始める。図案には様々な吉祥寓意を込め、全てオリジナルで作成。中国切り紙の伝統に基づき、絵解きの面白さと福を呼び込む縁起の良さを持ち合わせていることが特徴。作品の他、切り紙教室やワークショップ・雑貨制作等の活動を行う。
中国の民間芸術・剪紙(切り紙)に魅了された、日本人作家
古くから、中国の農村地域で母から子へと受け継がれてきた「剪紙(切り紙)」文化。
日々の暮らしの中で、幸せがやってくるように、悪い病気にかからないようにと、願いを込めて紙を切り抜いては、祭祀の時や室内に貼るなどして使われてきました。
切り紙で装飾されたランタンは、あたたかい光の中に図案を浮かび上がらせ、幻想的な空間を生み出します。
この中国の民間芸術に魅了されて、たくさんの切り紙作品を作り続けている日本人女性がいます。それが、上野文緒さん。個展やワークショップで次々と新しい作品を発表し、意欲的に活動されています。
ずっと日本にお住まいの上野さんが、なぜ中国の「切り紙」に魅了されたのでしょうか?
そして、何をモチベーションに日々作品を作り続けていらっしゃるのでしょう?
ここではその謎に迫ってみたいと思います!
縁起物モチーフをたくさんあしらった作品の数々
上野さんの切り紙作品には、中国の伝統に基づいて、縁起の良いモチーフがたくさん取り入れられています。
写真は、「サギ(鳥)」と「ハス(花・種)」を取り入れた図案。組み合わせることで、“昇進・合格”といった意味を持ちます。
また、切り紙の図案をよく見ると、実は1枚の紙で成立するように構成されているのがお分かりでしょうか?
こういった伝統的な技法は、本を読みながら少しずつ身に付けてきたのだそう。
勉強を続けているうちに、今では簡単な中国語も読めるようになったとか!
上野さんの、中国文化に対する“愛”が伝わってきます。
2017年には『福を招く旧暦生活のすすめ』という書籍の挿絵も担当。
なんと、表紙も含めて20作品ほど使用されています!
福を呼び、かつ親しみやすい上野さんの図案が、本の内容にぴったりだったのでしょうね。
実は絵が苦手!?自由な姿勢で取り組めるハサミが好き
切り紙のことを知れば知るほど、複雑な図案を考えたり、その細かな形状をハサミで再現したりと、どの工程もとても難しそうに感じます…!
上野さんにとっては、どこが一番しんどい作業工程になるのでしょうか??
「私は絵を描くことがすごく苦手なので、図案を決めるために動物とか植物の形を描くという作業が一番しんどいですね。全然うまく描けなくて…。逆に、切ったり手を動かしたりするのは割と好きなので、その辺りは楽しんでリラックスしてやってます。」
なるほど。ハサミで切る工程が得意な上野さん。
その作業は長時間に及ぶことも多く、腰や体が痛くなってもハサミであれば立って作業を続けられる、その自由さが好きなのだといいます。
時には細部を切りすぎてしまったり、破れてしまったり…。
そんな失敗も、どう形を整えて上手く乗り切るか、と楽しんでいらっしゃるよう。
細かい作業にもじっくり集中して取り組める、上野さんの忍耐強い性格だからこそ、切り紙にどっぷりハマることができたのかもしれませんね!
水彩の滲みがキレイ!伝統に縛られない技法も
“古くからの伝統”という要素も切り紙の魅力ですが、上野さんの作品からはどこか現代的な可愛らしさも感じます。
さらに最近は、切り紙に水彩で色を塗るなど、オリジナリティに富んだ作品も制作するようになったそう。
配色のバランスや色の濃淡がとってもキレー…!
「ずっと赤一色だったり、中国の題材でなければと思い込んでいる部分が大きかったんですけど、中国の彩色剪紙とはまた違う色彩でカラー作品も作ってみると意外と面白いなと思って。色があるほうが全体的に楽しい雰囲気も出ますしね。」
着彩をするようになってからは、必ずしも中国の伝統や図案の意味に縛られなくていいという気持ちになり、より個性を出しやすくなったという上野さん。
型を破ることで、さらに人の目を強く引き付ける魅力が生まれたのでした。
ワークショップでは、レベルに合わせたプログラムを!
上野さんは自身で作品を作るだけでなく、切り紙を楽しむワークショップも開催しています!
初心者向けの場合、まずは切り紙専用の特殊なハサミに慣れてもらうところから。
「練習図案を用意して、ちょっとしたコツだったり切り方に慣れてもらう時間を作ってます。そのあと実際に作業に入ってもらうんですけど、その図案も4~5点ぐらいは用意して、その中から自分が作れそうなものを選んでもらう形でやってます。」
そして上級者向けの場合は、オリジナルで図案を描くことにも挑戦してもらうのだとか。
「一から作るのは難しいと思う方もいるので、図案の中の一部を抜いておいて、ここの模様は好きにやってもらってもいいですよ、という形で。」
参加する人に合わせて、いつもプログラムを試行錯誤している上野さん。
最近はハサミが苦手な人のために、デザインナイフも用意してみたのだといいます。
楽しんでもらうための工夫がたくさん施されたワークショップ、機会があればぜひ参加してみたいですね!!
切り紙の図案を応用して、木製グッズに
上野さんの手で生み出されてきた、オリジナル図案の数々。
切り紙にするだけではもったいない!と、なんと木製グッズにも展開されています。
「イベントで他の作家さんが木のブローチを売ってるのを見て、かわいいなと思って。自分の図案でも試しに作ってみたんです。紙でしかなかったものが、木で飾れたり使えるものになっていくのがすごく楽しくて。」
写真は、力いっぱい福を撒いているウサギの図案を、木のブローチにしたもの。
紙素材とはまた違った、現代的なオシャレさを感じます。
お友達へのプレゼントにもよさそうですね。
ちなみに「ウサギ」のモチーフには“子孫繁栄”という意味があるそうです。
他にもカレンダーやコースター、型染め等、切り紙の図案を活用した様々な雑貨を販売していらっしゃいます。
次は切り紙の文化がどう応用されるのか、今後の活躍が楽しみですね!
(編集:村上)