年賀状デザインの裏バナシ | デザイン書道作家 鈴木 愛 ~つくり手の想いを知る~
デザイン書道で干支や賀詞を自由に表現!
書と絵がミックスされた独特の世界観
デザイン書道作家
鈴木 愛
採用されたロゴやアート作品は2000点程。日本デザイン書道大賞にて手がけた店舗ロゴが大賞を受賞。久保田一竹美術館・ニューヨークOUCHI GALLERY・ミラノTENOHA MILANOにて個展開催。秋篠宮殿下・妃殿下の御前にてライブパフォーマンス披露。日本デザイン書道作家協会 副理事。
文字?イラスト?
言葉のイメージを表現する“デザイン書道”
みなさんは“デザイン書道”という言葉を聞いたことがありますか??お手本通りの正しい文字を書くのではなく、言葉のイメージを膨らませて個性豊かに表現していく書道です。
「五感を研ぎ澄まして、目に見えないものへの想像力を働かせることで、表現の幅を広げることができるんです。」そう話してくれたのは、デザイン書道作家の鈴木愛さん。淡い色彩で表現された「蓮」の作品を手に、やわらかい笑顔を見せてくださいました…!
鈴木さんの作品は、愛知県の「豊橋」という地にゆかりのある商品ロゴや、お店の看板などで数多く使用されています。その世界観をより深く知るため、おたより本舗スタッフは豊橋へと足を運び、鈴木さんのアトリエを覗かせてもらいました!
どっしりとした迫力を出したいときは、
カラダ全体で書く!
自然に囲まれた風情豊かなアトリエには、たくさんの筆が用意されていました。毛の硬さに違いがあるらしく、表現したい作風によって使い分けているそうです。
「どっしりとした男性的な迫力を出したいときには、ヤギの毛の筆を使います。この筆には全然コシがなくて、自分の毛の力で立ち上がることができないんです。だから、書き手がカラダ全体を使って筆を立ち上げないといけない。」そう言って、実際に中腰の姿勢で文字を書いてくださいました。これはちょっと体力を使いそう…!!
逆にイタチの毛はビヨーンと弾力があり、しなやかな字を書くことができるのだとか。
自然のリズムと、
月の満ち欠けに合わせた作品作り
見たものや聞こえたもの、感じたものを文字の形で表現して、作品へと昇華させる鈴木さん。ある出来事をきっかけに“人にはものを生み出せる周期がある”と気付いたそうです。
「東日本大震災の年でした。当時ニュースでいろんな映像が流れてきて、ショックを受けてしまって。個展で発表するアート作品が書けなくなってしまったんです。」鈴木さんは毎日のように涙し、家族にも心配される程でした。でもある日を境に、それまで停滞していた作品の全てを書けるようになったそうです。それが新月の日でした。
「新月の時ってお産が多いという説もあって、作品も“生み出すべき時”があるのかなって共通項を感じたんです。生めない時期があって、そういう日に無理して自分を追い込むことはないんじゃないかなって気付いてからは、楽になりました。」その頃から、鈴木さんは自然のリズムに合わせ、“新月から満月の2週間”に集中してアート作品を仕上げるようになりました。
豊橋筆を使うことで、地域に恩返しがしたい
鈴木さんはもともと幼稚園の先生になることを心に決めていましたが、東京で挫折を経験。体調を崩したことを機にアルバイトを全部やめ、現在アトリエにもなっているお祖母さまの家へと引っ越してきました。
時間があり余る中、鈴木さんは当時カルチャースクールで触れていた“商業書道”に熱中。いろんなパッケージのロゴを自分なりに書いて、先生に見てもらうというサイクルが続いたといいます。そして1年たった頃、なんと先生から「そろそろ一人でできるからやってみたら?」というお言葉が。全てを忘れて熱中したからこそ、才能が開花したのかもしれませんね…!!
そんな経緯があってデビューを果たした鈴木さん。言葉の節々からは、豊橋への感謝の気持ちが溢れていました。「豊橋の地に来たことで、すべてがいい方向に動き出した感覚があるんです。自然が豊かだからすごく元気になれたし、豊橋に恩返ししたいという思いが強くなりました。」
そして鈴木さんは、地域の伝統工芸品である“豊橋筆”とも出会うことに。もっと豊橋筆を使って地域に恩返しがしたい。そんな思いが、今も鈴木さんの活動のモチベーションになっているようです。
事前の準備が肝!?ライブパフォーマンスの裏側
鈴木さんの活動の中には、「ライブパフォーマンス」というものがあります。ステージ上で音楽に合わせながら、巨大な紙に向かって筆を走らせていくんです。
重力に逆らった筆使いは、見ているだけで大変そうですが、、鈴木さんいわく、肝心なのは事前の準備なのだそう。どんなデザインに仕上げるか?どんな音楽に合わせるか?依頼主の方と打合せを重ね、OKをもらったら実際のサイズで練習を繰り返します。
ライブパフォーマンスの醍醐味は、やっぱり音楽の盛り上がりと筆の動きが上手く合うこと。「本番では突発的にいろいろあって、タイミングがずれてくることもあるんです。墨を多く付けすぎて切るのに時間がかかったり…。でも自分ひとりで仕上げようと思わず、その場にいるお客さんたちと一緒に作り上げればいいという気持ちで取り組んでいます。」
お客さんに喜んでもらうことを重視して生まれるライブパフォーマンス。機会があればぜひ生で見てみたいですね…!!
“読む”のではなく“感じる”デザイン書道へ
鈴木さんの今後の野望は、日本だけでなく海外にも自身の作品を広めていくことだそうです。
「日本語圏の人はデザイン書道を鑑賞するとき、どうしても文字を“読もう”としてしまうんですよね。そうじゃなくて、純粋に“感じる”っていうところを追求したい。それが海外でやりたい理由です。」
たしかに日本人の私たちは、達筆すぎる書き物を見ると、どうしても読み解こうとする気持ちが先走ります。鈴木さん自身も、もっと気軽に楽しんでもらえる工夫がしたいとおっしゃっていました。日本語を読めない海外の人たちは、鈴木さんの作品をどう感じるのでしょうか??リアクションがとても気になりますね!
(編集:村上)